原一探偵事務所では、メディアを招待しての公開尾行訓練を行ってきました。
こんな企業秘密公開みたいなことをやっている探偵社はほかには聞いたことがないです。
私も2回参加させてもらったことがあり、感銘を受けました。
2回目の鉄道利用者の尾行の基本を見せてもらった時のことをリポートします。
原一探偵事務所 探偵業届出番号:埼玉県公安委員会 第43070145号
【ホテルロビーにてナビ役探偵(左)と】
前回と同じく、無線を渡されてイヤホンを装着します。
探偵たちの通信を聞きながら尾行されるという奇妙な体験がまた始まります。
私にはこのイベントのナビゲーター役の探偵が随行します。
探偵の通信内容を解説してくれたり、タイムリーなワンポイント知識をくれる役割です。
前回と違い、今回は尾行する探偵と事前に顔合わせをしていません。
探偵チームはすでに張り込んで、ホテルの出口を監視しているとのこと。
さあ、用意ができました!
今からJR新宿駅に向かいます。
ホテルを出たとたんに探偵が私たちの姿を見つけ、通信が始まりました。
初夏、快晴、朝10時の新宿3丁目は人通りは少なめ。
しかし、周囲を見回しても探偵らしき人は見当たりません。
【さっそく向かいの歩道から撮られる】
徒歩尾行の基本1 尾行は真後ろとは限らない
尾行を疑っている人は真後ろばかりを気にしてふりかえりがちで、私もそうでした。
しかし、車道を挟んだ向こうの歩道を使うことも多いそうです。
さらには1本隣のビルの向こうの通りを通りながら、対象が交差点を渡るたびに撮影する場合も。
単独尾行では失尾(見失う)リスクが大きすぎて、そんなことはできません。
チームでいろいろなポジションから監視しながら行うことで、カモフラージュのバリエーションも広げられるのです。
ナビ探偵にいろいろ教わりながら、私たちは駅に向かって歩きました。
季節は暑すぎず快適で、通りは明るく、尾行されていることなど半分忘れて楽しく会話していました。
しかし、あとで受取った写真ではこの時も正面から撮られまくっていました。
【正面写真も撮られていた】
徒歩尾行の基本2 チームだと正面撮影が簡単
浮気調査でも素行調査でも、行動調査(尾行&撮影)では正面写真は価値の高い物です。
確かに、顔がちゃんと写っていなくても、後ろ姿だけでも、家族なら本人かどうかはだいたいわかります。
だからそんな写真でも浮気の有無の判定には一応役立ちます。
しかし、第三者(例えば裁判官)は本人かどうか判定が難しくなります。
よって、客観的証拠としては弱い、または証拠能力なしとなります。
また、パートナー本人も「似てるけど自分ではない」と言い出す可能性もあります。
こういう場面になると普段の性格からは想像できないような言い訳を強弁してくることは珍しくないです。
強く出られると別人のような気もしてくるもので、そうなると浮気調査は白紙です。
だから顔が鮮明に写った写真にはこだわってほしいし、そこにこだわりのある探偵を選んでください。
格安の探偵に頼むと尾行員は1人のため、後ろ姿ばかりになります。
単独尾行で対象者の正面に回り込むのは至難の業です。
しかし、チーム尾行なら簡単です。
一人が尾行を続けて、もう一人が先回りすればいいだけですから。
ほかにも色々メリットがあって、プロの尾行は必ずチーム尾行です。
JR新宿駅のそばまで来ました。
私たちは荷物もあるので、エスカレーターに乗りました。
【エスカレーターに乗る】
徒歩尾行の基本3 エスカレーター同乗はNG
尾行を心配している対象は、エスカレーターを登り切った場所、降りきった場所で振り返ることが多いそうです。
すると対象の後についてエスカレータ―に乗るのは、相手に見られるリスクを冒すということになります。
一度見られてもそれで疑われるとは限りませんが、かすかに記憶に残ります。
そしてもう一度見られた時に「さっき見たような気が・・・・」と思いだします。
つまり一度見られるとその後の行動に大きな制約がかかるわけです。
単なる移動の時にそういうリスクを冒す意味がありません。
だから探偵は同じエスカレーターには乗らず、階段を選ぶそうです。
平日朝とはいえ、10時出発だったので街中は空いていましたが、駅付近はさすがに人がかなりいました。
【新宿駅周辺はかなり混雑】
これに関連した話をナビ役探偵がしてくれました。
徒歩尾行の基本4 距離は混雑度で調整
対象との距離は、人が少なければ空け、人が多ければ縮めるのが基本。
人が少なければ発覚(バレる)危険が増すので近づくのは危険であり、距離を取っても失尾(見失う)の可能性は低いです。
人が多ければ失尾の危険が増すので近くで追う必要があり、そのようにしても人に紛れて発覚のリスクは低いです。
以上が基本ですが、対象の様子を敏感に察知しながら随時微調整していく必要があります。
そこは天性の勘によるところが大きく、なかなか教えてできるようになるものではないそうです。
こうして私たちはJR新宿駅の改札を通り、駅構内に入りました。
切符は買わず、イベント開始前に渡された複数種のプリペイドカードの1枚を使いました。
【事前に渡された各種プリペイドカード】
徒歩尾行の基本5(鉄道) 各種プリペイドカードは必須
今日では改札通過はプリペイドカード使用の比率が圧倒的に高くなっています。
対象のスピードに取り残されないように、探偵もプリペイドカードを用意しています。
路線によって使えるカードの種類に制限があることに備えて、多種類のカードを持っています。
階段を下ってホームに降りました。
【発車案内板】
徒歩尾行の基本6(鉄道) 改札や発車案内板はなるべく撮る
調査報告書では路線や駅などの経路を詳細に報告します。
改札や発車案内板はそのよい証明になるので、なるべく撮ります。
ちなみに対象が見ている発車案内板を見ることは行き先の推定に役立ちます。
【新宿駅ホームにて】
やがて電車が来たので乗車しました。
徒歩尾行の基本7(鉄道) 発車間際の飛び乗り降りに注意
尾行を警戒している対象がよくやる行動がこれです。
そういう理由でなくても、乗り間違いや気が変わって発車間際に飛び乗り・飛び降りすることはあります。
その時にあたふたしている人間がいたら、一気に尾行の疑念を生じさせてしまいます。
常に落ち着いて自然に対処できるスキルが求められます。
ちなみに万が一失敗した場合、単独尾行ならそこで失尾ですが、チーム尾行ならリカバーの可能性が残されています。
【電車の中にて】
電車に乗りながら、ナビ役の探偵はいろいろなワンポイント知識をくれます。
徒歩尾行の基本8(鉄道) 電車内通信はLINEを活用
探偵同士の連絡は普段は業務無線を使いますが、電車の中では使いづらいです。
周囲の乗客に聞こえてしまう可能性があるからです。
暗号・隠語が多いので意味は分からないと思いますが、何か怪しいことをしていると思われてしまいます。
そこで電車内での通信にはLINEのメッセージ通信をフル活用します。
撮影も基本的には行いません。
周囲の乗客に見られれば、乗務員に通報されるかもしれません。
例外もありますが、一般的には電車の中で特別なことが起きるケースは稀です。
よって、発覚・失尾を避けながら次の降車先につなぐことが優先です。
ちなみに探偵は絶対に座らず、ドアの側に立って過ごします。
起立・着席は目立つし、対象の動きにスムースに対応しにくいのです。
秋葉原で乗り換えた後、私たちは東京駅で下車しました。
【JR東京駅到着】
さっきから探偵たちがざわついているのが無線で聞こえます。
行き先は原一の本社(埼玉県川越市)とわかっているので、当初は池袋を予想していたようです。
私たちは新幹線の切符売場に並びました。
【新幹線切符売り場】
徒歩尾行の基本9(鉄道) 新幹線利用の場合は行き先の推定が重要
東京駅のように新幹線に乗り換え可能な駅で対象が下車した場合。
ズバリ新幹線に乗るのかどうかがポイントです。
乗る場合は一刻も早く行き先を推定すること。
行き先の最寄りの支社に連絡して車や探偵の手配をすることが必要だからです。
ナビ役の探偵は切符売り場に並んで対象の行き先を推定する方法を複数教えてくれました。
【新幹線発車案内板】
私たちは大宮行きの新幹線に乗りました。
全席指定の便に乗ってしまったのですが、ドア付近で立ってすごせば乗務員には何も言われませんでした。
ナビ探偵は新幹線の中での過ごし方や対象の監視方法について話してくれました。
そうしているうちに大宮駅に着きました。
【JR大宮駅】
在来線構内に入ったところで、ナビ役探偵からおもしろい提案がありました。
自由に動いてみませんか、というのです。
私は走ってみました。
無線では「走り出したぞ!」と慌てているのが聞こえます。
自分の動きが逐一報告されるのを聞きながら逃げるのは面白くて、久々に童心に帰りました。
ただ、目の届く範囲では同じように走っている人はおらず、どこから見ているのだろうと不思議に思いました。
実際に調査をかけられた場合、ちょっと走ったくらいでは尾行から逃れるのは無理だということがわかりました。
私はナビ役探偵と合流して、電車に乗りました。
【イベント終了!全員集合!】
川越駅に到着し、ホームを出たところで追う方も追われる方も全員合流しました。
尾行チームは3人で、リーダーは面識のある人でしたが、尾行中に見つけることはできませんでした。
皆で遅い昼食を取り、親交を深めました。
探偵インタビュー!
この時に参加してくださった新人探偵のインタビュー記事があります。
探偵へのインタビューなどなかなか読む機会がないと思うので、ぜひ一度目を通してください。