【夫婦探偵Tさん夫妻】
原一探偵事務所には夫婦で探偵をされている方がいます。
職業が同じ、会社が同じというだけでなく、ペアを組んで調査をされるのです。
最高のカモフラージュ力を持つチームといえ、非常に珍しいです。
通算6回目の取材の際に出席されていました。
取材のテーマは別にあったのですが、急遽「夫婦探偵」というテーマでもお話を伺うことにしました。
原一探偵事務所 探偵業届出番号:埼玉県公安委員会 第43070145号
A調査部長: こちらが夫婦で探偵をされているT君夫妻です。
T夫妻: はじめまして。よろしくお願いします。
私: 夫婦ペアが特にメリットを発揮する調査現場といえば、例えばどんなことですか?
T夫人: 浮気調査で旅館とかですね。食事風景の撮影は大切なんですが、それを堂々とやって怪しまれない。
W探偵: 隠し撮りなんかせずに堂々とカメラを回せるから、画像のクオリティが上がるんですよ。
T夫人: ホテルの入りや出も、相手が警戒しないので楽に撮れます。
私: ホテルの入りを撮るのに男女の探偵が偽装カップルになって一緒にホテル入りするテクニックを、尾行訓練同行の際に見せてもらいました。
しかし、Tさんたちは偽装カップルではなくて、本物の夫婦なんですねぇ・・・すごい話だなあ(笑)
【一見普通人、ひとたび調査に入れば凄腕】
T夫人: ショッピングしながらの監視もしやすいです。女は商品選びの演技、男は相手の監視、と役割分担できるからです。
A部長: 傍目には買い物に夢中な奥さんと付添に飽きている旦那さんにしかみえないでしょう?
私: なるほど。それだと売り場に長くいても不自然じゃないし、一瞬何かに気を取られてターゲットを見失うこともない。
話すのは主に奥さんの方で、旦那さんの方はあまり話さない。
話す時も失礼ながらもごもごした感じで、おとなしい印象。
外見は温厚そうな普通人、田舎の市役所にいそうな純朴で親切そうな人という感じ。
人と話している時に裏で別の思考が進行しているような人にはとても見えない。
奥さんの方もにこやかな専業主婦、仕事はやっていたとしても昔事務員、今パートというイメージ。
お二人で並ぶと、どこにでもいそうな善良で平凡な夫婦にしかみえない。
原一さんではこれまでたくさんの探偵さんに会ってきたが、その中でも一番探偵に見えないのがこのお二人。
それが実は連携して相手を尾行し、秘密のシーンを隠し撮りしていく仕事をしている・・・
しかもスゴ腕とのこと。
人は見かけによらないとはまさにこのことで、本当に驚かされました。
この二人なら最後まで怪しまれることはないはず。
【張込も全く自然に見える】
私: Tさんはどういうきっかけでこの道に入られたんですか?
Tさん: テレビです。「TVのチカラ」という番組で名古屋の失踪人発見をやってるのみて「いいなあ」と。
A部長: テレビ朝日で昔やってた番組です。「奇跡の扉・TVのチカラ」という事件報道番組で原一が取材協力していたんです。
Tさん: 探偵がどんなものかよく知らないまま、憧れだけで面接を受けに行きました。
私: その時、おいくつでしたか?また、親御さんの反対はなかったですか?
Tさん: 25歳でした。父親には大反対されました。
私: でしょうね。で、奥さんとの出会いは?
Tさん: 探偵になる前から付き合ってました。当時、彼女も探偵業界とは無縁でした。
私: 彼氏が探偵になると聞いて、奥さんはどう思いました?
T夫人: いいんじゃないか、と。
私: おぉ、理解がありますね!で、結婚は?
Tさん: 探偵になって2年後の27歳の時に結婚しました。
私: 奥さんの親御さんの反対はなかったのですか?
T夫人: うちの親は探偵に理解があって、ウェルカムだったんです。
私: それはラッキーでしたね。ところで、奥さんの方はどういう風にして探偵になったんです?
Tさん: 嫁さんを助手に使うようになったんです。教えてみると、とても飲みこみが早くて・・・
A部長: 今ではだんな以上の技量です。(笑)素質があったんでしょうね。
私: それで今はペアを組んで調査の仕事をしてるんですね。
Tさん夫妻: はい。
A部長: 一緒にいる時間がとても長いと思いますよ。プライベートではどうしてるの?
Tさん: 別々が多いですね。
私: 夫婦で同じ仕事をしているとそうなるものかもしれませんね。
【夫婦探偵、ただ今ターゲットを尾行中!】
初取材の時から仲良くしていただいているW探偵によると、Tさんは「歩きのスペシャリスト」。
つまり、徒歩尾行の達人ということです。
どういうことなのか聞いてみると、W探偵の上司であるA調査部長が答えてくれました。
私: Tさんは徒歩尾行においてどういう風に優れているんですか?
A部長: 第一の武器は絶対に「探偵か?」と怪しまれることのない、人の好さそうな、普通過ぎる外見です。
その一方で彼自身はターゲットの警戒心に敏感で、少しでもそれを感じたら離れるのもうまい。
ターゲットは男女カップルは警戒しないものですから、こんなT君が夫婦で動けばカモフラージュは完璧になります。
私: なるほど。
浮気調査に次いで多い探偵の仕事が家出人探し。
原一探偵事務所には調査部特捜課という家出人捜索専門部隊があります。
Tさん夫妻はこの仕事も得意で発見率が高いので、特捜の仕事を手伝うこともよくあるそうです。
これについても話を聞いてみました。
私: 家出人捜索の事例をいくつか教えてください。
A部長: 埼玉の事例をお話したら?
Tさん: はい。この件では、南浦和の銀行で繰り返し現金引き出しがあったので、指令部は近辺の漫画喫茶をローラー捜索するよう命じてきました。
しかし、やってみたところ感触がまったくないので、別の場所に滞在していて現金引き出し目的のためだけに浦和に来ているのかもしれないと考えました。
それで、改札の張り込みをさせてほしいと願い出たんです。
始発から終電まで夫婦で交代しながら4日ほど張込んだところ、ついに家出人を発見しました。
尾行した結果、家出人は巣鴨に住んでいることが判明し、無事依頼者に引き合わせることができました。
私: 巣鴨から南浦和は結構遠いですよ。現金を引き出すためだけにそんなに移動してたんですか?何のために?
A部長: 実はその家出人は過去にも家出して探偵によって発見されているんです。
その時、探偵のやり口を学習して、今回は発見されないように攪乱を図ったみたいです。
私: なるほど。それに対して探偵が駅で何日も朝から晩まで張込むという対抗策を取るというのは、家出人の想定外だったわけだ。
A部長: ええ、実際、他の探偵社では無理でしょうね。徹底した追及は原一ならでは、です。
あと、宮古島の話も面白いんじゃない?
T夫人: その件では家出人は関西の人で、最初は大阪で探してたんです。
それが宮古島で情報が出たのを依頼者に話したところ、依頼者も家出人が宮古島を好きだったことを思い出しました。
それで宮古島に渡って捜索を始めました。
旅館に聞きこみをかけるうちに、ある女将から「いいユタさんがいるから、聞いてみれば?」と言われました。
ユタというのは沖縄地方の土俗信仰の霊能者・占い師です。
ユタというものに一度会ってみたい好奇心も手伝って、試しに聞いてみることにしたんです。
家出人の写真を見せると「橋がみえる。伊良部島にいるよ。」と言うんです。
伊良部島は宮古島と海を渡る橋で連結された小島です。
伊良部島に行ってみると家出人を発見することができました。
私: 面白い話だなあ。
A部長: そのユタがよく当たるのか、たまたまなのか。(笑)
普段は地道で執拗な捜索で探し当てるところを、遊び心で占い師に相談してみたら、発見が少し早くなったというケースです。
夫婦探偵の家出人捜索の話、なかなか興味深かったのではないでしょうか?
原一探偵事務所には人探し専門の部署があり、ここへのインタビューも収録しています。
人探しはいなくなって間もない家出人捜索と、長い時間が経ってしまっている失踪人捜索に分かれます。
後者の話も収録していて、できる探偵社も少ない調査なので、ぜひ読んでいただきたいです。